マクロビオテックのリマクッキング教室の台湾人の友人李さんに「食養や自然療法の道を進むなら、東城百合子先生に会わないといけないよ。」と言われ、今日明治神宮会館で行われた東城百合子先生の「食べのものが人生を変える」、遺伝子学の権威村上和雄先生の「いのちのメッセージ」という講演会に行ってきた。
ちなみに李さんは、わざわざマクロビを学びに台湾から留学してきた人で、「日本の伝統的自然療法は、専門家だけでなく各家庭でできるよう普及活動がされていてすばらしい。その尊さを日本人は忘れている。」と言っていて、私に多くのことを教えてくれた。

「家庭でできる自然療法」の著作で有名な東城先生。今年で85歳。2000人は入る会場が満員だった。
私は、玄米菜食の優位性とか、自然療法の方法論とか、各論を説得力のある話しで教えてくれるのかと思っていた。内容は命の尊さを説いたもので、今自分が思っている内容に近くて、とても感動してしまった。
戦後、日本は「お天道様」が分からなくなってしまった。
お天道様とは太陽ではなく、もっと偉大なこの世の大いなる力。
戦前は、日本はご先祖様、お天道様が見ているから、その連なりの中に自分は生まれたのがだから、親や世の中に恥じない、人に役に立つ人間にならなければならないと、家庭教育が行われた。
戦後は、「お天道様」を教えることなく、知識情報、お金、目に見えることばかり教えて、家庭教育は崩壊し、家庭が壊れたから子供は生き方を知らないし、日本がおかしくなった。
生きる事とは、料理、洗濯、掃除であり、母親がそれを家庭の中で実践して手と体を使って子供に見せ、生きるとはどういうことか教えなければ、子供は育たない。
戦後、60年。もう4世代目が生まれて、「お天道様」はどんどん目減りしていっている。
こんな日本で情けない。私を生かしてくれた大地、この日本を愛して、感謝している。情けない、と東城先生は涙していた。
私は、自分の祖父母や両親を思ってしまった。
両親は自営業だったから、仕事もご飯もいつも家族一緒だった。私は両親が、お客様に頭を下げ商売をする様子をずっと見てきた。
父は、女に学はいらないといって、成績が良かった私を褒めたこともなかったし、進学するなといったから私は自分で働きながら勉強することにした。勉強より父は、家業の手伝いや家事をさせた。言葉使いも身だしなみも、躾が厳しかった。両親への反発から、早くに独立してしまったけど、両親は私に生活の仕方を教えて偉かったと思う。
ただ、戦後生まれの両親は、神を信じていなかった。親戚付き合いも嫌って、父は自分の葬儀も密葬にしたから、私達の世代は親族との縁が薄い。そういうところが、私が愛がない、と自分の家庭に感じていた欠落感だと思う。
救いは、私に「お天道様」のような大いなるものの存在を感じらせてくれた祖父母だったと思う。
お地蔵様の日といって、毎月お地蔵様に通っていた信心深い祖母。
正月、テレビで天皇陛下が映って「今年もどうぞよろしくお願いします。」とテレビに手を合わせていた、今は認知症になった祖母。
大切なことが書かれていると教育勅語を渡してくれたり、戦争の話などしてくれた祖父。
すべての人が、両親と暮らした家庭の環境を背負って一生生きていく。それは自分の感じ方、考え方にも思うし、老人介護をしているとよく思う。
東城先生が、「故郷岩手では野焼きをする。そうすると木の鳥の巣では母鳥が卵を守りながら死んでいるのです。母は、命を懸けて子供を守る。父は、種ですから飛び立っていくのです。男と女は、同権ですが使命は違うのです。体の作りを見ても男は生殖器が出て外で役割を果たすようになっているし、女は巣を体の中に持ち家を守るようになっているのです。男女平等といって女が世に出て家庭は崩壊した」と言っていた。
私も本当にそう思う。
女は、料理、洗濯、掃除がまず大切で、お金はその後だと思う。古風なのではなくて、大切な自然だと思う。
私が、女として女らしく生きて、かつ稼ぎたいと思って、看護婦になった。総合職の社会進出するOLが子供心に嫌だった。
最近、男性の看護師も増えているけど、それが患者にとって幸福かどうかは常々疑問。
村上和雄先生も東城先生に通じるお話をしてくれた。
遺伝子研究をしてきて、解明するほどに見事に規則正しく並んで完璧に働く遺伝子の暗号を誰が作ったか、それは大いなるものサムシング・グレートしかないという思いに至った。
どんなに科学が進んでも、人間は大腸菌からインシュリンをつくったり部分から部分を作ることはできるが、大元の細胞のことはほとんど分かっていない。細胞を作った大いなるものの、存在を思わざる得ない。大いなるものもの「サムシング・グレート」の中で生物は何十億年も生き続けて、今に至っている。今、私達が生きていることはただ事ではない、そう話してくれた。
自分達の心臓が動いているのも、臓器がホルモンや消化液分泌しているのも、自分の意志ではなく自律神経の働き。では、自律神経の自律性を作り出しているのは、それは東城先生のいう「お天道様」、村上先生のいう「サムシング・グレート」だろう。生物を作った大いなるものの力だ。
「ムビラというトランスミュージックが健康に役立つことを医学的に説明して」という話に、高知では引っかかってしまったが。
まず、この大いなるものの感性がない医学業界の人に、どう理屈を重ねても分かり合えないと思う。
この講演会を聞きながら、自分が何で祖先崇拝の降霊に使われるムビラに惹かれ続け、そして看護や食事療法にこだわってきたのか、分かってきたように思った。自分が描いた絵を見ても、子供や食事の絵ばかり。
人が健康に暮らすには、大いなる目には見えないものの存在を感じ感謝しながら、食事、掃除、洗濯といった自分の暮らす地に根ざした生活を実践しなければならないのだ。
日本は東城先生がいう「お天道様」の教えは、学校も両親も教えてくれなかった。だから、私はジンバブエで見つけたのかもしれない。
玄米菜食がいいとか、なんの野草がいいとか、梅肉エキスだとか、そういう各論的知識は後でいいのだ。本当に大切なことは、自分達が大いなるものの力で今を生かされている、自分達の命の尊さを感じる心を育てることだなんだ。
東城先生も村上先生も、私の祖父母の世代だ。
歳を得た人の言葉は、本当に偉大だと、胸が熱くなった。
帰りに明治神宮に、参拝にいった。今日の明治神宮は、七五三、お宮参り、結婚式の人が多くて賑わっていた。
新嘗祭のため全国から産地食材の献上物が拝殿の周囲に飾られて、野菜の宝船もあった。
明治神宮は、この東京の中でも本当に心清らかになる地だと思う。
清々しい気分で鳥居を出たら、原宿駅のコスプレや地ベタに座る若者達に急に冷ややかな気持ちになった。
お天道様を拝む日本の美しい心を築き治さないと、ご先祖様に申し訳ないよねと、東城先生の涙を思った。
